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奈良地方裁判所 昭和62年(わ)88号 判決

本籍

奈良県高市郡高取町大字観覚寺九五一番地の一

住居

右同所

医薬品卸売業

齊藤進

大正九年六月九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官南野聡出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金五〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、奈良県高市郡高取町大字観覚寺九五一番地の一の自宅において、仁寿薬舗の屋号を使用して医薬品卸売業を営んでいるものであるが、自己の所得を秘匿して所得税を免れようと企て

第一  昭和五八年分の総所得金額は、一億二、七二七万六、九一九円、これに対する所得税額は七、九〇〇万七、二〇〇円であるのにかかわらず、いわゆる二重帳簿を作成して売上げ及び仕入れの一部を除外するほか、公表経理上、架空の売上値引を計上して、これを売上先から簿外で取り立て、よって得た資金を株式、債権等として留保するなどの不正手段により、その所得金額のうち一億一、九四九万六、七三四円を秘匿した上、昭和五九年三月一四日、同県大和高田三和町二番一七号所在の所轄葛城税務署において、同署長に対し、総所得金額が七七八万一八五円、これに対する所得税額が一三六万七八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって同五八年分の正規の所得税額七、九〇〇万七、二〇〇円との差額七、七六三万九、四〇〇円をほ脱し

第二  同五九年分の総所得金額は、一億四、三一六万五、七二二円、これに対する所得税額は、八、五七〇万八、〇〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち一億三、一七三万八、〇〇六円を秘匿した上、昭和六〇年三月一五日、前記葛城税務署において、同署長に対し、総所得金額が、一、一四二万七、七一六円、これに対する所得税額が二五四万一八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同五九年分の正規の所得税額八、五七〇万八、〇〇〇円との差額八、三一六万六、二〇〇円をほ脱し

第三  同六〇年分の総所得金額は、一億五、五一〇万三、九三三円、これに対する所得税額は九、三六一万九、一〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち一億四、五八六万八、一四一円を秘匿した上、昭和六一年三月一四日、前期葛城税務署において、同署長に対し、総所得金額が九二三万五、七九一円(但し、老齢者年金特別控除の適用誤りにより、八四五万五、七九一円と記載)、これに対する所得税額が一七三万九六〇〇円(但し、老齢年金特別控除の適用誤りにより、一四〇万五、四〇〇円と記載)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって同六〇年分の正規の所得税額九、三六一万九、一〇〇円との差額九、一八七万九、五〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示引用の公訴事実全般につき

一  大蔵事務官浜隆彦作成の各脱税額計算書説明資料

一  大蔵事務官今宮福徳、同高橋進(検152027号)、同浜隆彦、同高木正弘、同吉川正之作成の各査察官調査書

一  辻辰規の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  今西哲也、鈴木修、井手昇、曽和成五、里田貴美代の大蔵事務官に対する各供述調書

一  富士豊弘の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  北山千恵子、杉本恵宥、森勲、中西正憲、堀田忠一、徳井教寛、内田順、竹本利彌、森田正善、森田能里子、森田郁夫、中嶋力生の大蔵事務官に対する各供述調書

一  山田善範、坂口芳延の大蔵事務官に対する各供述調書

一  阪本京子、齊藤愛子の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  黒田すみ、田端忠雄の大蔵事務官に対する各供述調書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  被告人の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  被告人の当公判廷における供述

同公訴事実第一につき

一  大蔵事務官浜隆彦作成検1号の脱税額計算書

一  大蔵事務官廣里博文作成検4号の証明書

一  大蔵事務官高橋進作成検9号の査察官調査書

同公訴事実第二につき

一  大蔵事務官浜隆彦作成検2号の脱税額計算書

一  大蔵事務官廣里博文作成検5号の証明書

一  大蔵事務官高橋進作成検1011号の各査察官調査書

同公訴事実第三につき

一  大蔵事務官浜隆彦作成検3号の脱税額計算書

一  大蔵事務官廣里博文作成検6号の証明書

(法令の適用)

判示引用の公訴事実第一第二第三の各所為はいずれも所得税法二三八条(懲役と罰金の併科刑選択)。

併合罪につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(右第三の罪の懲役刑に加重)、四八条二項。

労役場留置につき同法一八条。

刑執行猶予につき同法二五条一項。

(裁判官 村田晃)

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